テス(BBCドラマ) | 海外ドラマ女子会

『テス』は2008年に製作されたドラマで、イギリスのBBCで放送された。原作となったのは、1981年にトーマス・ハーディによって執筆された『Tess of the d'Urbervilles』という小説。直訳は『ダーバヴィル家のテス』だが、日本語訳では『テス』として出版されている。
主人公のテスを演じたのは『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』でヒロインを演じたジェマ・アータートン。
『テス』は全4話のミニドラマで、完結済み。AmazoプライムビデオやHuluで字幕版のみ配信されている。Amazonをよく利用するならAmazoプライムビデオ、日テレ系ドラマが好きならHuluでの視聴がおすすめ。

貧しい行商人ジョン・ダービフィールドは、ある日牧師から自身が貴族ダーバヴィル家の子孫だと聞かされたのをきっかけに金持ちの親せきを見つけ出し、仕事をもらうため娘のテスをダーバヴィル家へ向かわせる。

テスは当主の息子であるアレックの口利きでダーバヴィル家で飼っている鶏の管理の仕事を得るが、すっかりテスを気に入ったアレックから猛アタックを喰らうように。

アレックはあの手この手でテスの気を引こうとするが、一向に応えようとしないテスに痺れを切らし強硬手段に出てしまうのだった。

後日、テスはアレックが申し出た援助の一切を断って実家に帰るが、両親は結婚もせず妊娠したテスを恥と考え、妊娠・出産をひた隠しにしていた。
その結果、赤ん坊は洗礼すら受けられないまま生後数週間で死亡してしまうことに。

赤ん坊が死んだことをきっかけに、家を出ることを決意したテスは妊娠や出産のことは絶対に口外するなと念押しされたうえで農場へ働きに出る。

そこでエンジェルと再会したテスは恋に落ち、2人は結婚を決意するのだが忌まわしき記憶の元であるアレックと再会してしまい……。

舞台となるのは、19世紀末のイギリス東北部の農村。
当時のキリスト教やイギリスの階級社会、生活などがとてもよく反映されたドラマでとても勉強になる作品です。

原作となったのはトマス・ハーディの『ダーバビル家のテス』という小説。
1979年にロマン・ポランスキー監督の手によって映画化されましたが、ドラマ版のほうがより原作に近い内容となっています。

『テス』で描かれるのは、貧しい家庭に生まれた美しく純粋な主人公テスを取り巻く最高に幸せで最高に最低なラブストーリー。
物語の結末はハッピーエンドではなくバッドエンドですが、とても切なくてもう一度観たいと思えるような感動的なお話です。

特に魅力だったのが、エディ・レッドメイン演じるエンジェルの純粋さとテスに対する深い愛情。正直かなりのハマり役で見た目からしてエンジェルなのですが、同じくらい中身も素敵な青年で、乙女心をくすぐられます。

そして物語の主人公であるエマ役のジェマ・アータートンは映画版ナスターシャ・キンスキーのような絶世の美女感はないものの、今にも壊れてしまいそうな儚い美しさがとてもよく表現されていました。

そしてテスが出会う乳しぼりの女性たちも、みんな性格が良くて魅力的。
テスとは恋敵になってしまうのですが、2人が結婚することになっても恨み言などいわずテスが苦難に立たされたときも必死で助けようとします。
こういった登場人物たちの存在が、最低すぎる家族やアレックと対比していてみんなの幸せを願わずにはいられませんでした。

物語自体は全4エピソードで完結する短い話なのですが、すっかり感情移入してしまい、ラストシーンはもう涙なしには見れませんでした。

『テス』で描かれた内容は実話ではないものの、現実社会でも屋敷の主人や息子によって妊娠させられるメイドは少なくなく、またそのような女性が困り果てて実家に帰ると家の恥扱いされていたのだとか。

そういった背景から考えるに、『テス』は実話ではないけれど全くの作り話というわけでもないと言えるかもしれません。
観ていてとても辛くなるストーリーではありますが、名作文学を忠実に再現した良作なのでぜひ一度見ていただきたいです。

『テス』は全4エピソードで完結済み。現在、HuluやAmazonプライムビデオなどで字幕版のみ視聴できます。