『ヴァイキング~海の覇者たち~』はヒストリーチャンネルで製作された歴史・アドベンチャードラマ。2013年から2020年にかけて配信され、シーズン6をもって完結した。
本ドラマの題材となっているのはヴァイキングと呼ばれる海賊たちで、海を渡っては他国からの略奪を繰りかえす過激なストーリーが描かれている。
脚本・製作総指揮をつとめたのは『エリザベス』でアカデミー賞、『THE TUDORS~背徳の王冠~』でエミー賞を受賞したマイケル・ハーストだ。
主要キャストも豪華な顔ぶれとなっており、主人公のラグナル・ロズブローク役を演じたのはトラヴィス・フィメル。妻役にはキャサリン・ウィニック、兄役にクライヴ・スタンディンらが名を連ねている。
現在『ヴァイキング~海の覇者たち~』はNetflixでのみシーズン1~ファイナルシーズンまで視聴可能。
『ヴァイキング~海の覇者たち~』題材とされるのは、西暦800~1050年頃の”ヴァイキング時代”を牛耳っていたと言われる海賊・ヴァイキングたち。
彼らの生活は、農業を営みながら夏になると海を渡って近隣諸国から略奪を繰りかえすことで成り立っていて、物語の中では何度も容赦のない略奪シーンや血みどろの権力争いなどが描かれています。
というのもヴァイキングたちの信仰する宗教では、勇敢に戦って死を迎えるとヴァルハラという聖地に旅立てると言われていて、みんな死に対する恐怖がありません。
むしろ、数々の戦いを生きぬいてきたとあるヴァイキングは腕っぷしを誇るどころか「俺はヴァルハラに呼ばれていないんだ」とガチへこみするほどの落胆ぶり。
それほど彼らにとってヴァルハラは神聖な場所で、病死するくらいなら戦って死にたいというのが本望なのです。
だからこそ、ドラマ内で描かれる戦いのシーンはいつだって全力!
ひとたび争いがはじまると、頭から足の先まで血みどろになっているなんて当たり前だし、生首なんかもゴロコロ転がる地獄絵図。
相手が無抵抗だろうと女子供だろうと、容赦なく襲いかかるので、えげつなさへの耐性は必要かもしれません。
こうして見ると「男のロマン的なドラマなの?」「女が見てもつまらないかな?」と思いがちですが、そうでもなく。
ヴァイキングの中には当然女性もいて、彼女たちの生き様がとにかく勇ましいんです。
男のヴァイキングに比べると、確かに戦いに出る女性ヴァイキングは少ないうえに、男尊女卑な一面もあって襲われたりすることも。
でも決して弱いわけではなく、どんな状況でも知性と冷静な判断、そして立ち向かっていく勇気で相手を退ける強さを持っています。
どのキャラクターも個性豊かで長所短所あるのですが、個人的なイチ押しキャラはラグナルの妻・ラゲルサ。
ヴァイキングとしての腕っぷしは勿論のこと、とっても愛情深いうえに、さまざまな苦境に直面しても決して折れない芯の強さの持ち主なんです!
ラグナルがハラルドソンを打ち倒して首長の妻になっても決して驕らず、それどころか困っている人には手を差しのべる……。血なまぐさいドラマの中でも慈悲の心を感じさせる、素敵すぎるキャラクター。
だからこそ、ラグナルが出来心で浮気して相手を妊娠させ、ラゲルサに出て行かれてしまったときは大バカ者だと思いました。
結局このとき息子のビヨルンもついて行ってしまい、ラグナルは一度の大きな過ちですべてを失うことに。
ラグナルたちは別れて以来会っていなかったようですが、シーズン2で追いつめられたラグナルを救うためラゲルサとビヨルンが駆けつけたシーンは感激でした。
さらにいうとシーズン2は、ラグナルたちが別れてから4年が経過。
再会したビヨルンはすっかり少年から青年に成長していて、これがまた、かなりの美青年なんです。
そんなビヨルン役を演じたのは、バンクーバー出身の俳優アレクサンダー・ルドウィグ。
9歳の頃に『ハリー・ポッター』のCM出演でデビューしています。
イケメンなうえに肉体美が素晴らしいし、むさくるしいヴァイキング集団の中でかなり目の保養になるキャラクターなのではないでしょうか。
ちなみに主人公ラグナル・ロズブロークはヴァイキング時代の古ノルド語詩などに記述される古代スカンディナビアの伝説的な指導者で王、英雄とされている人物。
今のところ彼が本当に実在したという確たる証拠はないようですが、剛勇のビョルン、ハールヴダン・ラグナルスソンらを含めた名だたる息子たちの父だとされています。
諸説ある人物のため、ある程度創作の部分も入っているとは思うのですが本ドラマ『ヴァイキング~海の覇者たち~』で描かれたラグナルは、とにかく好奇心旺盛な性格の持ち主という印象が強かったです。
それが顕著にあらわれていたのが、ストーリーの始まりとなるエピソード。
ヴァイキングは夏になると海を渡って遠征し、他国から金品を略奪することで生計を立てていて、毎年夏になると首長が略奪先を発表します。
ラグナルは航海が難しいと言われ続けてきた西に肥沃な土地があると信じてやまず、何度も掛け合うのですが保守的なハラルドソンは相手にせず。
とうとう我慢できなくなったラグナルが何をしたかというと、秘密裏に船をつくりあげ、仲間を募って勝手に遠征してしまったのです!
正確に言うと船を造ったのはフロキという船大工なのですが、製作費用はすべてラグナルが出したようで。なかなかの執念を感じますよね。
そしてラグナルの読みは正しく、航海のすえに船は西の地・ノーサンブリア王国に到着。
陸に降りたラグナルたちは手近なリンディスファーン修道院を襲って無抵抗な修道士たちを虐殺し、金品を略奪していきます。
そんななか、ラグナルは意思疎通のできる修道士アゼルスタンを見つけて強い関心を持ち、殺そうとせがむ兄ロロを制して彼を自分の奴隷として連れ帰ることに。
アゼルスタンを連れ帰ったのは、自分の中にある他国への興味関心を彼が満たしてくれると思ったから……といったところでしょうか。
キリスト教徒なのに、人を殺すことを屁とも思っていない異国の人間に捕らえられてしまったアゼルスタンが本当に不憫で見てられませんでした。一緒に捕まっていた他の修道士たちは、村でむごたらしく殺されて見世物にされていましたし……。
少しずつラグナルとの間に絆が芽生えてきたかと思った矢先に、儀式の生贄として捧げられかける始末。
結局そのときはオーディン以外の神を信仰している人間を捧げることは出来ないって言われて命拾いしていましたが、心打ち砕かれるし信頼なんて消え失せますね。
そんなこんなでシーズン1こそ異教徒たちに畏怖する子羊感満載だったアゼルスタンですが、シーズン2からは少しずつ彼も変化してきて、どんどん物語の要となっていく様子も注目です。
余談ですが、この修道院襲撃事件こそが、世で言う”ヴァイキング時代”の幕開けだったとも言われているようで、ドラマ内でも象徴的に描かれていますよ。
これまで襲撃にあったことがなかったため、一度目は反撃すらできずに終わってしまったものの、やられっぱなしでは終わらないイングランド側の逆襲も見逃せません!
さて、そんなヴァイキングたちの生活を描いた『ヴァイキング~海の覇者たち~』は配信当初から評価が高く、人気を集めていたドラマのひとつでしたが、その一方で史実を元にした作品であるがゆえの難解さやシーズン4でラグナル役のトラヴィス・フィメルが降板したことなどが影響して、2020年にシーズン6をもって打ち切りに。
しかし本作の100年後を舞台とした新企画『Vikings: Valhalla(原題)』の制作権をNetflixが獲得。まだ正確なアナウンスはないものの2021年に世界独占配信予定となっています。
続編では世界的に有名な4人のヴァイキングと言われているレイフ・エリクソン、フレイディス、ハーラル3世、イングランド王ウィリアム1世を主人公に、激動のヨーロッパをたくましく生き抜き新たな世界を開拓した彼らの壮大な冒険が描かれるとのこと。
100年後の世界なので『ヴァイキング~海の覇者たち~』に登場するキャラクターは死んでしまっていることになりますが、新たな物語内でも神話として語り継がれるなどの繋がりがあるのだとか。
直接登場しないことに対する寂しさはちょっぴりありますが、彼らの生き様が後世にどんな影響を残したのか?など新たな視点で楽しめるといいですね。
現状『ヴァイキング~海の覇者たち~』を全シリーズ見放題で観れるのはNetflixだけ。全シリーズ字幕・吹き替え版が用意されています。Netflixは英語音声を聞きながら日本語字幕、日本語音声を聞きながら英語字幕なんて使い方もできるので、英語学習にもうってつけですよ!