2004年から2009年にかけて放送されたアメリカ・カナダ合作のテレビドラマ。全70話収録後は「Lの世界 ジェネレーションQ」に物語を引き継ぎ、10年後の世界を描いた動画配信で再び話題を呼ぶ。
「Lの世界」では、ロサンゼルスに住むレズビアンの友人グループの生活を現実的な視点で追従。登場人物は多いが、それぞれのキャラクターの持つ感性や抱えている問題をシーズン通して見事に展開。LGBTQに理解を示す多くの人から支持される。
物語はメインキャラクター「ジェニー」を中心に繰り広げられる恋愛の価値観を、重要なポップカルチャーに乗せて演出。劇中の性愛描写を美しさや、はかなさとして捉えられるのも女性的エロスならでは。かの有名作「セックス・アンド・ザ・シティ」の概念を、理論的で極端に引き上げた作品としても楽しめるドラマである。
大学を卒業したばかりの新進作家ジェニーは、ボーイフレンドの住む町、LAのウエストハリウッドに引っ越してくる。そこで出会ったのは隣人のレズビアンカップル。ジェニーは彼女らのやりとりに刺激を受けるのだった。
ウエストハリウッドでは人口の3分の1がゲイだという。当時のジェニーはストレートであったため、この後、自らの恋愛感やセクシャリティが変化していくことを予期せずに過ごしていた。
一方、ジェニーの隣人であるベットとティナは7年間交際を続けるパートナー。子供を持つ願いを叶えるため、精子ドナーの男性探しに苦労している。
ベットとティナを囲むレズビアン・コミュニティの仲間も魅力的な女性ばかり。ジャーナリストでバイセクシャルのアリス。テニスプレーヤーで同性愛を偽るデイナ。ヘアスタイリストで女性にモテるシェーン。アルコール中毒のキットはベットの異母姉。
LAにも馴染んできた頃、ティムは引越しパーティを開き彼女たちを自宅へ招待。ジェニーはパーティの最中で、カフェ「プラネット」のオーナーであるマリーナと出会い心惹かれる。
ある夜、ついにジェニーとマリーナは深い関係になるのだが、そのことを知らないティムは翌日ジェニーにプロポーズする。
登場人物それぞれのLove(愛)とLife(人生)とLust(欲望)……。
Lの世界ではファンの期待を上手く管理した描写が多く、どの場面を切り取っても見どころです。中でも、特に印象的な場面や見どころをいくつか挙げていきましょう。
まず、ウエストハリウッドのカフェ「プラネット」での会話では、LGBTQのテーマをありのままに取り上げ、飾らない日常として表現しています。
あまりにもナチュラルに表現されているため同性愛者ではなくてもスッと心に浸透するはず。性的マイノリティにこだわりを持つ人も、持たない人も、女性なら一度は味わったことのある感情を“恥ずかしくない”として描いています。
また、アリスの作る「チャート」も見どころのひとつです。チャートとは、これまでに関係を持った相手の名前を入力し、そこからまた次の相手へと糸を結ぶ「もつれたSNS」のこと。つまり、誰が、誰と、誰につながるのかを知る画期的な手段をチャートと呼んでいます。
アリスのように進歩的でチャーミングな人物も居れば、保守的な性格のデイナも登場します。プロテニスプレーヤーのデイナは「隠れレズビアン」として世間体をとても気にしています。そのように社会問題の背景をキャラクターの個性を通して表現しているところにも感銘を受けます。
ジェニーにおいては、主役級の登場人物であるにもかかわらず皮肉に演出しています。普通のドラマなら主人公に共感できるように物語は進みますよね。ところが、Lの世界では、物語が進むにつれジェニーの一言や行動が気に触るようになってきます。彼女の心情に注目していなければ「嫌い」の感情を抱くでしょう。
こういった演出へのこだわりも、より一層Lの世界を好きになれる理由です。作中ではシックスセンスなどを手がけた「M・ナイト・シャマラン」に触れるジョークもあり、少なからず影響を受けているのかもしれません。
Lの世界の「L」とは、愛、人生、欲望、レズビアンなどの頭文字。一見するとニッチなテーマに思えますが、作品自体は開放的で刺激的、オープンハートでオープンマインド。人の本質に通ずるテーマとなっています。
本作はこれまでに多くの賞を受賞し、高い評価を受けている作品です。シーズン1〜シーズン6までの動画はhuluとU-nextで視聴可能。吹き替えの配信はhuluのみとなります。
まだ見たことのない人も動画配信などを通して、ぜひ物語に触れてみてくださいね。豪華なキャストの顔ぶれと個性溢れる魅力にファイナルシーズンまで目が離せません。